美容や化粧品の分野におけるバイオテクノロジーとは、微生物、植物、動物など、生物が持つ働きを利用して、美容に役立つ成分をつくったり、肌の状態を整えたりする技術のことです。たとえば、酵素や細胞などが持つ働きを利用して、化粧品に使われる成分をつくります。自然の素材をそのまま使うだけではなく、生物の働きを科学的に利用することで、より品質や機能にこだわった成分をつくることができます。
代表的なものとして、発酵の力を利用してヒアルロン酸やアミノ酸などをつくる技術があります。また、細胞を培養するときに生まれる成分を利用した化粧品の研究や、一人ひとりの体質などに合わせて美容ケアを考える「パーソナライズ美容」にも活用されています。自然界にある生物の働きを科学的に利用し、美容に役立てるための技術として、化粧品や美容の分野で研究が進められています。
主なポイント
- 発酵の力を利用する:
発酵によって、植物などに含まれる成分を肌になじみやすい状態に整えます。成分によっては、発酵前より分子が小さくなることで、角質層まで届きやすくなるものもあります。ガラクトミセスなどの発酵成分が代表的な例です。 - 肌の構造を参考にした成分:
肌のバリア機能を支えるラメラ構造や細胞膜の構造を参考にして、リポソームやヒト型セラミドなどの成分が開発されています。肌になじみやすいように成分の構造を工夫することで、肌への負担を抑えながら、必要な成分を角質層まで届けやすくしています。 - 「幹細胞・エクソソーム」の活用:
幹細胞の研究では、細胞がつくり出すさまざまな物質が注目されています。その一つであるエクソソームは、細胞同士の情報伝達に関わる小さな物質で、美容分野でも肌の状態を整えるための研究が進められています。こうした研究をもとに、肌に不足しているものを補うだけでなく、肌が本来持つ働きをサポートする「再生美容」への活用が期待されています。
- 「マイクロバイオーム(常在菌)」の研究:
肌の表面にいるさまざまな菌の種類や働きを、バイオテクノロジーを使って調べる研究が進められています。肌にいる菌のバランスに着目し、肌の環境を整える成分を配合した「育菌ケア」などにも活用されています。
- 遺伝子の働きに着目した研究:
生活習慣や紫外線などの環境によって、遺伝子の働き方が変化する仕組みに着目した研究です。こうした研究をもとに、年齢による肌の変化に関わる特定のたんぱく質などに働きかける成分を使った化粧品の開発も進められています。 - 環境に配慮した原料づくり:
希少な植物を大量に採取するのではなく、植物から少量の細胞を取り出し、タンクの中で培養して美容成分をつくる方法があります。植物を守りながら原料を生産できるため、水や森林などの自然環境への負担を抑えつつ、品質の安定した原料を供給しやすくなります。 - 「安全性」の科学的立証:
毒性試験やアレルギーテストなどを行い、製品の安全性を確認する研究も進められています。高い機能を目指しながらも、肌への刺激や負担が少なくなるよう、成分や製品のつくりが検討されています。

