フォンタンジュとは、17世紀後半から18世紀初頭、ルイ14世時代のフランス宮廷を中心に流行した、垂直に高くそびえ立つ装飾的な髪型および髪飾りのことです。名前の由来は、国王の寵姫(ちょうき)であったフォンタンジュ公爵夫人。狩猟中に乱れた髪を、咄嗟にレースの靴下留め(リボン)で頭頂部に結い上げた彼女の姿を、国王が「実に見事だ」と称賛したことが流行の始まりと伝えられています。

最大の特徴は、リネンやレースを段々に重ねて糊(のり)で固めた、「タワー(塔)」のような巨大な構造にあります。当初はリボンでまとめたシンプルなものでしたが、流行が進むにつれてエスカレートし、針金の土台に高価なレースや宝石を幾重にも積み上げるスタイルへと変貌を遂げました。あまりの高さに、馬車に乗る際やドアを通る際にも支障をきたすほどでしたが、身分の高さや富を誇示する「権威の象徴」として、後のロココ時代へと続くデコラティブな巨大ウィッグ文化の先駆けとなりました。

主なポイント

  • 「偶然の産物」からモードへ: 狩猟中のアクシデントから生まれたスタイルが、国王のひと言で当時のヨーロッパ全土を支配するトレンド(モード)となった歴史的エピソード。
  • 「垂直」の美学: 髪を高く盛り上げるだけでなく、レースの飾り(パピヨン)を何段も垂直に立てるのが特徴。これにより女性の背丈を格段に高く見せ、威厳を演出した。
  • 「贅の極み」としてのレース: 当時、非常に高価だったレースをふんだんに使用。装飾の豪華さがそのまま家柄や財力を示すステータスシンボルとなった。
  • 「不自由さ」との葛藤: 巨大化したフォンタンジュは重く、頭を支える首への負担が激増。室内での移動や馬車への乗降に制限がかかるほどの「不便を伴う美」の象徴。
  • 「美容史」の巨大化トレンド:
    • 17世紀:フォンタンジュ(自毛と飾り)。
    • 18世紀:パピエ(巨大なカツラ)。

      ※この流れを作る、装飾主義の重要な転換点。
  • 「ルイ14世」の崩御とともに終焉: 国王の好みが変わるとともに急速に衰退。その後はより低く、横に広がるスタイルへと流行が移り変わっていった。