伊達衿とは、着物の衿の内側に重ねて、あたかも着物を二枚重ねて着ているように見せる装飾用の布です。別名を「重ね衿(かさねえり)」と呼びます。かつて、お祝い事などの礼装では「喜びが重なるように」との願いを込めて着物を二枚重ねて着る習慣(比翼仕立て等)がありましたが、それを簡略化し、衿元だけにその格式と華やかさを残したものが現代の伊達衿です。
最大の特徴は、顔周りに「差し色」を一点投入できる点にあります。着物と半衿(はんえり)の間にわずか5mmほど覗かせるだけで、顔立ちを明るく見せたり、全体のコーディネートを引き締めたりする視覚効果があります。振袖、訪問着、袴(はかま)など、華やかなハレの日の装いにおいて、個性を演出するための最も手軽で効果的なアクセントアイテムです。
主なポイント
- 「格式」の象徴: 振袖や卒業式の袴など、儀礼的な場面で「礼を尽くす」という意味合いで用いられる。カジュアルな小紋や紬(つむぎ)には通常使用しない。
- 「5mm」の美学: 出しすぎると野暮ったく、隠れすぎると意味がない。長襦袢の半衿と着物の衿の間から、平行に数ミリだけ均一に覗かせるのがプロの着付けの技。
- 「色合わせ」のセオリー:
- 同系色: 上品でまとまりのある印象に。
- 反対色(補色): 襟元にインパクトを与え、若々しくモダンな印象に。
- 素材のバリエーション: 正絹(しょうけん)の広領(ひろえり)仕立てが一般的だが、近年はラインストーン、パール、レース、フリル付きなど、洋風のエッセンスを取り入れたデザインも人気。
- 「リバーシブル」の活用: 表裏で色が異なるタイプや、金銀が配されたものがあり、一本で4通りの見せ方ができる多機能な製品も多い。
- 固定方法: 着物の衿に直接縫い付けるか、専用の「コバン(クリップ)」で数箇所留めて固定する。動いてもズレないよう、中心を正確に合わせることが重要。

