髪質とは、髪の毛の硬さ、太さ、くせの有無、形状、水分や油分の保持量、そしてダメージの進行度合いなど、一本一本の毛髪が備えている物理的・化学的な性質の総称です。

最大の特徴は、遺伝や骨格の形状に由来する先天的な要素と、加齢や生活習慣、施術履歴、外部からの刺激(紫外線や乾燥など)に伴う後天的な要素が複雑に絡み合って変化する点にあります。美容室の現場においては、顧客が希望するヘアデザインを具現化するための出発点であり、パーマ液カラー剤といった薬剤選定の成否を握る極めて重要な指標です。自分の髪質を客観的に把握し、それに応じたタンパク質の補給やホームケアシャンプートリートメントの選定)を行うことは、髪表面に豊かなツヤを宿らせ、扱いやすい「しなやかな質感」を維持するための基盤となります。

主なポイント

  • コルテックス」の密度が左右する髪の硬さと太さ
    髪の硬さ(剛毛・軟毛)や太さは、毛髪の大部分を占める「コルテックス(皮質)」と呼ばれるタンパク質の密度や、最外層を覆うキューティクルの厚みによって決まります。硬くて太い髪は構造が強固でハリコシがある反面、全体の毛量が多く広がりやすい性質があります。逆に柔らかくて細い髪(細毛)はしなやかですが、トップがペタンと潰れやすく熱や摩擦によるダメージを受けやすい特徴を持ちます。
  • 「毛穴の歪み」とタンパク結合が生む直毛・くせ毛の差異
    髪が真っ直ぐに伸びる直毛に対し、波状にうねる波状毛や強く縮れる縮毛などの「くせ毛」は、頭皮内にある毛包(毛穴)の形状が湾曲していることによって発生します。毛穴が歪んでいると、押し出される髪の内部でタンパク質の結びつき(シスチン結合)や水分バランスが不均一になり、それがうねりやねじれとなって髪の表面に現れます。
  • 「毛髪内部の空洞化」が招く乾燥とパサつき
    繰り返しのヘアカラーパーマドライヤーの過度な熱(過乾燥)によってキューティクルが剥がれると、髪内部の水分やタンパク質が流出してスカスカの「空洞化状態」に陥ります。水分と油分の保持バランスが崩れた髪は、湿気の影響を強く受けて不規則に広がり、ツヤを失って硬くゴワついた髪質へと変化します。
  • 髪質改善」や「縮毛矯正」による後天的な質感補正
    強いうねりやくせ毛に対しては、パーマ液を用いてシスチン結合を化学的に切断・再結合させて真っ直ぐに固定する「縮毛矯正」が有効です。一方、ダメージや乾燥による広がりに対しては、最新の毛髪科学に基づいた「髪質改善トリートメント酸熱トリートメントなど)」を施し、髪の内部に新たな架橋構造を作って芯から強度を補正するアプローチが定着しています。
  • カウンセリング」を起点とするオーダーメイドの薬剤選定
    美容師は施術の前に必ず、目視や触診によって顧客の細密な髪質チェック(毛膨潤のしやすさ、薬剤の浸透速度、過去の履歴など)を行います。個人の髪質を見極めてアルカリ性の強弱や処理剤(プレケア)の配合量を微調整することで、髪への負担を最小限に抑えながら、狙い通りの鮮やかな色彩や持続性の高いウェーブを引き出します。
  • 「ホームケア」との連動による理想的な状態の維持
    サロンで整えた美しい髪質を維持するためには、自宅でのケア(スカルプケアヘアケア)の選定が不可欠です。硬い髪質には油分を補ってしなやかにまとめるエモリエント効果の高いコンシーラーや植物オイルを、細い髪質にはカチオン界面活性剤ケラチンで表面を軽く保護して根元から立ち上げる製品を合わせるなど、髪質に合致した適切な手順が求められます。