髷とは、髪の毛を頭頂部や後頭部で一括して束ね、折り曲げたり輪(ループ)を作ったりして結い上げた髪型、またはその結ったパーツそのもののことです。伝統的な日本髪の造形を構成する上で、全体のバランスを決定づける最も重要な中心組織に位置づけられています。

最大の特徴は、周囲のパーツから集めたすべての毛先を最終的に一箇所へと固定する「要(かなめ)」の役割を担っている点にあります。本式の日本髪を結い上げるプロセスにおいては、髪全体の領域を左右の側面の膨らみである「(びん)」、後頭部の張り出しである「髱(たぼ)」、額の上の部分である「前髪」、そして頭頂部で結い上げた中心部分である「髷」の4つに明確に区分して成形されます。時代や個人の身分、年齢、オケージョン(TPO)の変遷によって多角的な種類が考案されてきました。代表的なスタイルとしては、髷の根元を高く結い上げ、現代でも和装の婚礼時(ハレの日)における花嫁の「文金高島田」として受け継がれている「島田髷」、江戸時代の武士や現代の大相撲の力士が結う髪型で、元々は髪の量が少なくなった人が結った髷に由来する「丁髷(ちょうまげ)」があります。また、遊女の勝山が考案したとされる、輪を作って毛先を折り返した勇ましい「勝山髷」や、髷の先を左右にふんわりと広げて植物の葉の形状を模し、町娘の間で流行した「銀杏返し(いちょうがえし)」などが存在し、結髪師の高度な技術を客観的に示す日本固有のヘアデザイン用語です。

主なポイント

  • 髷の定義
    髪の毛を頭頂部や後頭部付近で一括して束ねて折り曲げたり輪を作ったりするスタイリング技法のことであり、日本髪を構築する際、全体のバランスを取りまとめる中心パーツのことです。
  • 日本髪を構成する4大パーツの連動
    顔立ちのフロントデザインを左右する前髪や、左右の側面に張り出しを作る鬢、後ろ側の髱から集められたすべての毛先を集約して固定するための、骨組みとしての役割を指します。
  • 島田髷にみる格式の高さ
    髷の根元を上へと高く引き上げて固定する結い方であり、現在も結婚式の文金高島田として継承され、和装の衣服(着物)に調和する端正で格式高いシルエットを完成させます。
  • 丁髷の歴史的な由来
    江戸時代の武士の身だしなみや現代の力士の髪型として定着している伝統的な仕様であり、歴史的には毛髪のボリュームが減少した際に髷を結った生活習慣が起源となっています。
  • 勝山髷や銀杏返しにみる意匠の変化
    輪の折り返しに力強さを持たせた勝山髷や、毛先を左右に広げて銀杏の葉のように見せる銀杏返しなど、個人の好みの系統やトレンドに合わせて多彩なスタイルに発展した事実を指します。