ドーランとは、舞台、映画、TV、コスプレなどの「強い照明」や「カメラ」を前提とした、油分を非常に多く含む硬めのクリームファンデーションです。名称は、19世紀後半にドイツの劇団員カール・ドーラン(Carl Dohran)が開発し、自身の会社で販売した製品名に由来します。

最大の特徴は、一般的なファンデーションを遥かに凌ぐ「遮断的なカバー力」と「密着性」にあります。油性(グリースペイント)であるため、汗や水に強く、激しく動く舞台上でも崩れにくいのが強みです。また、遠くの客席からも顔立ちがはっきり見えるよう、地肌を塗りつぶして「新しい肌」を構築する力に長けています。日常メイクとは異なり、肌の欠点を隠すだけでなく、キャラクターそのものを創り出すための、演劇・特殊メイクにおける「皮膚の代わり」となるプロフェッショナルな基材です。

主なポイント

  • 「グリースペイント」の質感: 非常にこってりとした油分が主成分。肌にピタッと張り付き、深いシワや大きな毛穴、アザなども物理的に埋めて平滑にする。
  • カラーバリエーション」の幅: ベージュ系の肌色だけでなく、真っ白(白塗り)、真っ黒、原色(赤・青・緑)などが揃っており、歌舞伎の隈取りからゾンビメイク、ピエロまで対応可能。
  • 「水ありスポンジ」の叩き込み: 固形に近いため、水を含ませて固く絞ったスポンジで「叩く(パッティング)」ように乗せる。これによって油分が均一に伸び、ムラのない鉄壁のベースが完成する。
  • 「粉(こな)おさえ」の重要性: 油分が多いため、そのままではベタつき、衣装を汚してしまう。仕上げに大量の「フィニッシングパウダー(粉)」を叩き込み、油分を吸着させてマットに固定するのが鉄則。
  • クレンジング」の特殊性: 通常の洗顔料では全く落ちない。油分を強力に浮かせる「コールドクリーム」や、プロ用のオイルクレンジングで時間をかけて優しく溶かし出す必要がある。
  • 「光の反射」の計算: 舞台照明を浴びた際に、顔が白飛びしたり、逆に影が消えすぎたりしないよう、油分と顔料の配合が精密に設計されている。