イギリス結びとは、明治時代初期(1883年頃)の鹿鳴館時代に流行した、日本における「洋髪(ようはつ)」の先駆けとなったヘアスタイルです。それまでの複雑な日本髪(日本伝統の結髪)に対し、西洋の髪型を日本人の髪質や装いに合わせてアレンジしたもので、和装・洋装のどちらにも合う洗練されたアップスタイルとして、上流階級や知識階級の女性たちの間で爆発的に広まりました。

構造的な特徴は、前髪やサイドをふっくらと高く膨らませてボリュームを出し、後ろに長く垂らした三つ編みを丸めて後頭部でまとめる点にあります。当時の日本髪は、一度結うと数日間解かないため不衛生になりやすく、また強い力で結い上げるため「牽引性脱毛症」を招くなど、健康上の問題も指摘されていました。そこで1885年に結成された「婦人束髪会(ふじんそくはつかい)」が、より衛生的で、自分でも短時間で結える機能的なスタイルとしてイギリス結びを含む洋髪を推奨したことで、日本の女性の髪型は大きな転換期を迎えました。

主なポイント

  • 日本髪からの脱却: 重い油(鬢付油)を多用せず、地毛の動きを活かした軽やかなシルエットが、近代化へと向かう当時の女性像を象徴した。
  • ボリュームと三つ編みの融合: 前方の「ポンパドール状の膨らみ」と、後方の「三つ編みのお団子」を組み合わせることで、優雅さと実用性を両立。
  • 衛生面と健康への配慮: 毎日解いて洗髪ができるため、頭皮の清潔が保てる「改良髪」として医学的・社会的な視点からも支持された。
  • 和洋折衷の美: 鹿鳴館の華やかなドレスにはもちろん、従来の着物姿に合わせても違和感のない上品な佇まいが、当時の流行の最先端であった。
  • 現代のクラシカルアレンジ: 現代においても、明治レトロな雰囲気の和装ヘアや舞台衣装、あるいはアンティークな婚礼ヘアのルーツとして、そのエッセンスが取り入れられている。