十二単とは、平安時代の中期に完成した、日本の宮廷女性の最高正装です。正式名称を「五衣唐衣裳(いつつきぬからぎぬも)」または「女房装束(にょうぼうしょうぞく)」と呼びます。絹織物を何層にも重ねることで生まれる重厚なシルエットと、襟元や袖口から覗く色のグラデーション(かさねの色目)に、四季を愛でる日本独自の美意識が凝縮されています。
現代では、皇族の即位の礼やご成婚などの国儀で見られるほか、神社での挙式や「前撮り」において、一生に一度の特別な装いとして高い人気を誇ります。当時の着付けは20枚を超えることもありましたが、現在は簡略化され、五枚の衣を一枚に仕立てた「五衣(いつつきぬ)」などを用いて軽量化・機能化されています。かつらとして着用する「大垂髪(おおすべらかし)」と、雅な「檜扇(ひおうぎ)」を添えることで完成する、和装の原点にして究極のスタイルです。
主なポイント
- 「かさねの色目」の様式美: 表地と裏地の組み合わせで、桜、紅葉、松など季節の植物を表現する繊細な色彩設計。平安貴族の教養とセンスが問われる部分。
- 「衣(きぬ)」の構成:
- 唐衣(からぎぬ): 最上層に羽織る短い上着。
- 裳(も): 腰の後ろに長く引きずる装飾的な布。
- 打衣(うちぎぬ): 光沢を出すために叩いて(打って)仕上げた衣。
- 「大垂髪(おおすべらかし)」との調和: 髪を後ろに長く垂らし、額をスッキリと見せる。現代の婚礼では、地毛ではなく専用の重厚なかつらを使用するのが一般的。
- 驚異の「総重量」: 現代の婚礼用でも約10〜15kg、当時のフルセットでは20kgを超えることもあった。そのため、歩き方や所作には独特の優雅さと体幹が求められる。
- 「檜扇(ひおうぎ)」と「帖紙(たとうがみ)」:
- 檜扇: 檜の薄板を綴った扇。顔を隠すためや、儀式の作法として使用。
- 帖紙: 懐に忍ばせる和紙。現代のハンカチやメモのような役割。
- お服上げ(おふくあげ)の技術: 十二単を美しく着付ける技術は非常に特殊。一本の紐で次々と重ねていき、最後に余分な紐を抜くという、プロの「お服上げ師」による伝統技法が光る。

