裾除けとは、和装において長襦袢(ながじゅばん)の下、肌に直接または肌着の上に重ねて巻く下半身用のアンダーウェアです。別名「蹴出し(けだし)」とも呼ばれます。長方形の布に腰紐がついた形状が一般的で、腰に巻き付けて使用します。

最大の役割は、着物の「裾さばき」を劇的に良くすることです。歩行時に太ももやふくらはぎが長襦袢の裏地と擦れるのを防ぎ、静電気を抑えることで、足運びを軽やかにし、着崩れを最小限に留めます。また、大切な長襦袢や着物を「皮脂・汗・摩擦」から守る防波堤でもあります。素材は、滑りの良いベンベルグ(キュプラ)や、吸汗性に優れたクレープ地、さらりとした手触りの麻など、季節や好みに合わせて使い分けるのが和装通の嗜みです。

主なポイント

  • 「蹴出し」の由来: 歩く際に裾を内側から「蹴り出す」動作を助けることから。特に正絹の着物を着る際は、裾除けの滑りの良さが歩き姿の優雅さを左右する。
  • 「腰布(こしぬの)」の引き締め効果: 紐がついている上部の「力布(ちからぬの)」部分は綿素材(さらし)で作られていることが多く、ここをグッと腰に巻き付けることで、骨盤を安定させ、下腹部をスッキリ見せる補正効果も期待できる。
  • 季節による素材の使い分け:
    • : 麻やクレープ(ちぢみ)。肌に張り付かず、汗を素早く吸収・発散させる。
    • : 東レシルックやキュプラ。静電気を抑え、冷たい外気から下半身を保温する。
  • 「ステテコ」という選択肢: 近年では、股ズレを防ぎ足さばきがさらに楽な「和装ステテコ(パンツ型)」を裾除け代わりに愛用する女性も急増している。
  • 「ワンピース型」の利便性: 上半身の「肌襦袢」と「裾除け」が繋がったスリップタイプ。お腹周りがゴロつかず、着付けがスピーディーになるため現代の主流となっている。
  • 汚れの「身代わり」: 裾除けが階段や椅子との摩擦を引き受けることで、高価な着物の裏地(八掛)の擦り切れを物理的に防いでいる。