髪置きとは、平安時代から続く日本の伝統的な通過儀礼の一つで、乳児期に頭髪を剃る習慣を終え、初めて髪を伸ばし始める節目を祝う儀式です。現代の「七五三(三歳)」のルーツとなった行事であり、かつては男女ともに行われていました。
平安時代の貴族社会では、病気の予防や健康な毛髪の発育を願って、男女ともに数歳(主に3歳)までは髪を剃り上げる風習がありました。11月15日の吉日に「髪置きの儀」を執り行うことで、幼児から子供へと成長したことを公に認め、将来の長寿を願いました。儀式では、綿で作った疑似的な白髪(綿帽子)を頭に載せ、「髪が白くなるまで長生きするように」という祈りを捧げます。この白髪に見立てた麻や絹の糸(すが糸)に白粉(おしろい)をまぶして祝う、日本特有の奥ゆかしい慈しみの文化が凝縮された儀礼です。
主なポイント
- 「三歳の祝い」の原点: 現代の七五三において3歳の男女が祝うのは、この「髪置き」の習慣が形を変えて受け継がれたものである。
- 白髪(綿帽子)のまじない: 糸や綿を頭に載せるのは、「白髪の老人になるまで健やかに」という延命長寿の強い願いが込められている。
- 男女共通の通過点:
- 男子: 将来、立派な髷(まげ)を結えるように髪を蓄え始める。
- 女子: 艶やかな黒髪を長く伸ばす、女性としての第一歩を祝う。
- 衛生と信仰の融合: 医療が未発達だった時代、髪を剃ることで頭部の清潔を保ちつつ、儀式を通じて神仏の加護を求めるという、切実な親心の表れでもあった。
- 武家と公家の違い: 室町時代から江戸時代にかけて、公家は2歳、武家は3歳で行うなど、身分によって実施時期に細かな違いがあったが、後に3歳に統一された。
- 現代の面影: 現代の七五三でも、三歳の被布(ひふ)姿や髪飾りに、この「髪を大切に育み始める」という喜びのエッセンスが息づいている。

